歯ぐきから血が出る・歯が揺れている

インタビュアー

歯周病って、歯ぐきから血が出たりするだけの別になんてことはない状態と思いますが。

いえいえ、歯を失う一番の原因は、歯周病です。

一般歯科医 吉沼

インタビュアー

え?虫歯じゃないんですか?

今時虫歯で歯を失う方は少ないですが、歯周病で失う方は多いです。
歯を失うことも怖いですが、同様に全身疾患との関連性の方も怖いです。
血管内に血栓を作る、糖尿病が悪化する、早産や低体重児で生まれてしまうリスクが高まる、そのほかにもいろいろあるんです、続きは診療室で話しましょう。

一般歯科医 吉沼

インタビュアー

おお、こ、怖くなってきました。

大丈夫です、定期的なメンテナンスで改善しますし、歯を失うリスクも圧倒的に低くなります。
歯周病を専門に勉強してきていますので、何でも聞いてくださいね!
あと、当院には歯周病菌をこの目で見られる顕微鏡(位相差顕微鏡:いそうさけんびきょう、下記画像参照)があります。
実際をウヨウヨ動いているのを怖いかもしれませんが見てみてください、一緒にやっつけていきましょう!

一般歯科医 吉沼

歯周病とは?

歯や歯のまわりに細菌が侵入して感染症を起こしている状態です。
歯周病の毒素は、歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)を溶かし(骨吸収)、歯を失う原因にもなります。
自覚症状はほとんどなく「サイレントディジーズ」(Silent Disease:静かなる病気)と呼ばれ、自然に治ることもなく、放っておけばどんどん進行します。
「毎日欠かさず歯をみがいているのに50歳すぎたあたりから急に歯ぐきが弱って、歯が抜け落ちてしまった」このような場合は歯周病なことが多いです。
30歳以上の日本人の80%は、歯周病に罹患していると考えられています。
予防には「早期発見・早期治療」がとても大切です。

歯周病の「歯が抜けること以外」のリスク

1. 狭心症・心筋梗塞・脳梗塞

歯周病菌は、血管内でプラーク(血栓)を作ります。
その血栓が脳梗塞、狭心症や心筋梗塞の一因となります。
歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。

2. 糖尿病

糖尿病になると歯周病になりやすい、また歯周病になると血糖コントロールが悪くなるという相関関係があります。
歯周病の治療をすると血糖値コントロールが改善するという研究成果も多く報告されています。
参考:国立国際医療研究センター「歯周病と糖尿病の深い関係」

3. 妊娠性歯肉炎/低体重児早産

エストロゲン(特定の歯周病原細菌の増殖を促す)プロゲステロン(炎症の元のプロスタグランジンを刺激)の2つのホルモンは、妊娠後期には生理時の10~30倍になるといわれているため妊娠性歯肉炎が起こりやすくなります。
また、早産は7倍にものぼり、喫煙やお酒、高齢出産などよりももっとリスクが高いのです。
参考:日本臨床歯周病学会「歯周病と妊娠」

4. 誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、飲み込んだものが誤って気管に入ってしまうことです。誤って肺に入ったバイキンが炎症を起こすことです。
誤嚥性肺炎の原因となるバイ菌は、歯周病菌が多いといわれています。

治療の流れ

インタビュアー

確かに怖いですね、歯周病。歯周病の治療って何をするのですか?

メインは「ご自身の歯ブラシ」です。
それを「一緒に」ちゃんと習得していただく。
後は定期的なクリーニングで、歯石やプラークを取ります。
虫歯は削って詰めれば終わりですけれど、歯周病は「ご自身の歯ブラシ」と「定期的な歯科医院でのメンテナンス」の2本の柱で進行を抑える・・・完治というのが難しい「生活習慣病」です。

一般歯科医 吉沼

※歯周病は「生活習慣病」です。
重度の歯周病の場合、歯周外科、再生療法という治療ができる大学病院にご紹介も可能です。

インタビュアー

歯医者さんでの治療よりも、自分の歯磨きが大事なんですか?

そういう感覚でいてください。
しかし、当院がばっちりサポートしますので安心してくださいね。

一般歯科医 吉沼

Q&A

Q. 骨吸収って何ですか?

A.「こつきゅうしゅう」と読みます。顎の骨がやせる、とよく表現しますが、それの事です。歯周病菌により骨がとかされることもその原因の一つです。
吸収=溶かされる、と置き換えて考えて下さい。

Q. 歯間ブラシ、歯の間が空きそうで心配です。

A. 実は歯磨きで取れる汚れは5割、デンタルフロスを使っても8割といわれています。
その補助をするのが歯間ブラシです。
メンテナンスの仕方の指導も時間を取ってしていますので、一緒に頑張っていきましょう!

教えて!先生~歯周病の検査、何をやっているの?

インタビュアー

診察の時にチクチクやるの(下記画像参照)は、どういう意味があるんですか?

歯周病の有り無しや、歯周病であればその程度や状態を調べるための重要な検査です。
「ポケット測定」といいます。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

チクチクやるの、ドキドキするんですが・・・。痛がる人もいますか?

痛いと感じる方も、違和感程度の方もいらっしゃいます。
歯肉の炎症が強いと、痛みを感じやすくなると思います。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

痛い痛くないは、炎症の度合いによるんですね。

はい。
炎症が強いときは、ある程度落ち着いてからポケット検査をすることもあります。
また、炎症が強いと歯石を取るだけでも痛い場合があるので、その時はまずはブラッシング指導を行い歯磨きをお家でしっかりして頂いて炎症か少し落ち着いてから歯石を取るようにしています。
「歯石を取るのが痛くて歯医者に行きたくない」となる事は避けたいので。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

それはありがたいです。
「ポケット測定」は、何ミリならOKなんですか?

歯と歯ぐきの境目は、健康な状態でも1~3ミリの溝があります。
(場所によって変わります)
溝が「4ミリ以上」だと、歯周病です。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

チクチクやる検査を目隠しされた状態でやり、数字を枕元で言われて「これってOKなの?」と思いながら聞いていました。
分かるとドキドキせずに済みます。
歯周病って、痛くないんですか?

最初のうちは痛みがないことが多いです。
ですので気がつかずに進行していき、痛みが出てくる頃には、重症になっていることがあります。
「歯ブラシをして少し出血するなぁ」くらいの時はあまり痛みはないかと思います。
歯肉が大きく腫れてズキズキ痛んだり、歯が動揺してくると、歯周病が重度になっている可能性があります。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

そういう状態で来る人はいる?

いらっしゃいます。
その状態ですと、歯を残せず抜歯になってしまうケースもあります。
ですが、歯周病が重度の状態でも「歯周病治療」と「ご家庭での歯磨き」を行なっていく事で、抜かずに歯を保存できる場合もあります。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

そうなんですね、知らなかったです。(汗)
歯周病予防の歯磨き粉、よく宣伝でやっているんですけれど、本当にいいんですか?

歯磨き粉やうがい薬は、あくまでも「補助的なもの」です。
一番重要なのは「しっかりプラークを落とす歯の磨き方をすること」です。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

「歯周病予防の歯磨き粉を使えば治る」と思っている人は、いっぱいいると思います。うちの家族は、高めな歯磨き粉を買ってきがちです・・・。

高い歯磨き粉を使うと、歯肉の腫れが落ち着いてきたと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
もしかすると、高い歯磨き粉ですから意識して一生懸命磨くようになり、そのためプラークが落ち、補助的である歯磨き粉の成分との相乗効果で炎症が落ち着いてくるのかもしれないですね。

歯周科医 佐々木

インタビュアー

高い歯磨き粉だからもったいないからちゃんと磨く、という良いスパイラルですね。(笑)

「自分での歯磨き」と「定期的な歯のクリーニング」が両輪が、どちらもとても大事です。
このような疑問も、遠慮なくご質問くださいね。

歯周科医 佐々木

あなたのお困りごとは何ですか?